怒らない=優しいではない
怒らない人、と聞くとなんでも許す寛大な心の持ち主なのかな、と思う人は多いと思います。
しかし、怒らない=優しいという公式は必ずしも成立するとは限らないと私は考えます。
今回は、なぜ怒らない人が必ずしも優しいとは言えないのか、説明したいと思います。
なお、今回説明する「怒る」は教訓を説く、という意味合いのある「叱る」を含まない、単純な心理状態および態度を言うとします。
1.「怒る」ってそもそも何?
⑴「怒る」の定義
「怒る」とは
[動ラ五(四)]
1 腹を立てる。おこる。憤慨する。「烈火のごとく―・る」
2 激しく動く。荒れ狂う。「波が―・る」
3 角張って、ごつごつしている。角立つ。「―・った肩」
という意味らしいです。(コトバンクより)
今回解説するのは1の腹を立てる、憤慨するといった心理状態や態度のこととします。
⑵「怒り」のメカニズム
アドラー心理学によると人は他人、または事象に対して「期待」し、その期待に反する出来事が起きた時に「怒り」が発生します。
この場合でいう「期待」とは「こうなってほしい」という積極的な期待ではなくても構いません。「こうするべきだ」「こうするはずだ」「こうなるのが普通だ」といった自分の中では当たり前であるという認識で足ります。
例えば、料理店で食事を使用としたところ、店員の態度が悪かった場合には多の場合「怒り」が発生します。私たちは店に入ったら客として扱われ、店員は客に丁寧に対応するのが普通だと思っているからです。しかし、上記の例ではこの「期待」が裏切られているため「怒り」が発生するわけです。
また、この期待に反する出来事も、自分にとって不都合なもの、または自分に不利益をもたらすものである必要があります。
例えば、自分が見知らぬ他人に突然殴られたら「怒り」はわくでしょうが、見知らぬ他人が突然殴られても「怒り」はわかないのが通常です。(正義感がかなり強い人は別として)
また、50点だと思ったテストが思った以上によくできていて90点だった場合、「期待」に反する出来事であることは間違いないですが、「怒り」の原因とはなりません。自分にとって不都合でも不利益でもないからです。
なお、「自分に」とっての不都合・不利益は場合によっては他人の不都合・不利益も含みます。
例えば、自分の子供が誰かに突然殴られた場合、親としては相手に怒るのが通常です。この場合、直接的に自分の不都合・不利益となっているわけではありませんが子どもという自身とほぼ同視できる、または身近な対象に不利益・不都合が生じているから、「怒り」が発生しているのです。
このように、私たちが怒るとき、私たちの中では①「期待」がある→②「期待」が裏切られ、自分にとって不都合なこと・不利益となることが起こる→③「怒り」がわくという因果経過が発生しているのです。
2.怒らない人には何が起こっているのか
「でも、自分の周りでは怒らない人もいる!!」という人もいるかもしれません。実際、そういう人は一定数います。では、そのような人の中では何が起こっているのでしょうか。考えられる場合として以下の二つがあります。
⑴「怒り」は発生しているものの外部に出ていない、または出していない
⑵そもそも「期待」していない
これらの場合について、以下検討していきます。
⑴「怒り」は発生しているものの外部に出ていない、または出していない
例えば、本人としては怒っているつもりでもその人があまり感情が表に出ないタイプの人間であった場合等が「怒り」が発生しているものの外部に出ていない場合だと言えます。
また、怒ってはいるものの外部に出しても自分に利益がない、等と考えて意図的に怒っていることを表に出さない場合が「怒り」が発生しているものの外部に出していない場合に当てはまります。
このような人の場合、周りが認識していないだけで怒ってはいるので安易に優しいと判断するのは危険です。腹の中では何を考えているのか探りながら失言を控えましょう。相手は仏ではありません。
⑵そもそも「期待」していない
それでも、たまに本当に怒っていないという人もいますよね。
明らかに腹立たしいことをされたのに本人に話を聞いてみても「全然怒ってない」と返ってきたり…。
このような人は、そもそも「期待」していないということが考えられます。
例えば、彼氏が浮気したとします。
このような場合、彼氏に対して「怒り」を覚えるのが普通だと思います。恋人の不貞による喧嘩は世の常ですからね…。私?あった覚えがないですね(血涙)
この場合、通常なら「期待」が存在し、それが裏切られることによって自分の不都合・不利益が生じますから「怒り」は発生するのが妥当です。
ところが、彼女が全然怒らずあっさり許したとします。
この場合、彼女はそもそも「期待」していないのです。つまり、彼氏が浮気をしようがしまいがどうでもいいのです。
部下がミスをしたのに上司が全く怒らないのもこの場合ですね。この時、上司は部下がミスなく仕事をしてくれると「期待」していないのです。このようなシチュエーションで発生する「怒り」は「叱り」に結びつくことも多いです。だから、「叱られているうちが華」等というのですね。
この場合、そもそも相手に対して無関心なんですよね。「期待」は関心のある相手だから起こりうることが多いわけです。にも関わらず、「期待」せず結果的に全く怒らないというのはやはり冷たいように思います。
それなら、浮気したときに怒ってくれる彼女、ミスしたときに怒ってくれる上司の方がよっぽど優しくて好感が持てると思いませんか?
3.まとめ
以上、私が怒らない=優しいではないと思う理由でした。
今回の記事で新たな発見があったなら幸いです。
結論として、彼女のやきもちは最高ってことだね(違う)