しがないオタクの独り言

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技能実習生問題から見る日本の将来

今回の記事はちょっと真面目に。

去年の12月に入管法改正が成立し、日本に住む外国人を取り巻く環境が大きく変わりました。

この入管法改正には従来日本が実施してきた技能実習制度が大きく関係しているのですが、今回私はその制度の抱える問題について触れる機会があったので、そこで得た気づきを共有したいと思います。

 1.技能実習制度とは?

技能実習制度とは、簡単に言うと外国人労働者を日本の企業に短期間受け入れる制度です。

この制度には外国に支社を持つ企業などがその支社から外国人社員を研修生として受け入れる「企業受け入れ型」と外国の受け入れ機関が現地で技能実習生を募集し、日本の監理団体に送り出した後、技能実習生を日本の企業に紹介する「監理団体型」があります。「監理団体型」は外国の受け入れ機関と日本の監理団体が人材あっせん機関のような役割を果たしているイメージですね。

技能実習生問題とよく世間で話題にされているのは後者の「監理団体型」です。「監理団体型」の場合現地の受け入れ機関、日本の監理団体、日本の企業など技能実習制度に関係してくる要素が多いのと、制度の構造が複雑になっているから様々な問題が起きやすいのです。

2.技能実習制度の何が問題なの?

端的に言うと日本の企業が外国人技能実習生を単なる使い捨ての労働力として扱っているため、人権問題となりかねないような劣悪な労働環境が生み出されていることです。

技能実習生を受け入れる企業というのは日本人労働者を雇うことも困難な零細企業が多いです。そのような企業は少しでも人件費を削ったり収益を上げたりしたいと考える。そんな時比較的低賃金でも働いてくれる技能実習生を労働力として利用するのです。しかも労働諸法違反の低賃金で長時間働かせたりする場合が多い。

また、日本語が不自由なのをいいことに技能実習生に対してパワハラ・セクハラを行ったりする企業もあります。

あと、外国の送り出し機関と企業がグルになって不当な雇用契約を勝手に技能実習生に秘密で締結したりすることもありますね。婚姻禁止とか。(結婚の自由は憲法の24条で保障されているため結婚の禁止は人権侵害にあたります。)

3.技能実習生問題の背景

⑴不当な労働契約に基づく雇用主の恣意的な権力濫用

じゃあ労働諸法違反とか人権侵害って雇用主に言えばいいじゃん!!と思うかもしれませんが現実問題としてそれは厳しいのです。

先ほども言った通り外国の送り出し機関と日本の企業がグルになって不当な契約を勝手に締結していることがあります。そしてその内容の中に技能実習生が問題を起こした場合は企業の雇用主が強制帰国させることができる」旨があることが多いんですね。だから雇用主に言おうもんなら強制帰国させられる可能性が出てくる。しかも日本に来る前に借金してる技能実習生が多いので、稼げないまま強制帰国となると厳しいのです。

⑵送り出し機関による違約金没収

じゃあ、雇用されてる企業から逃げ出せばいいじゃん!!!とも思うかもしれませんがこちらも厳しいです。

技能実習生は日本に来る前に現地の送り出し機関に保証金という前金を提出します。額はその時その時によって違いますが、ざっと100万以上ですかね。しかも日本に技能実習生として来る外国人は日本に出稼ぎに来るパターンが多いのでこの保証金を工面するのにまず苦労します。ですので大体借金をしたり親族に保証人になってもらって用意することが多いです。

で、この保証金の何が問題かというと日本で技能実習生が働いている企業から逃亡した場合には違約金として没収されることです。

せっかく日本に出稼ぎに来たのに100万相当の保証金が没収されたんじゃ元も子もありませんよね。しかも低賃金で働かされていることが多いから普通に労働の対価として稼ぐことも困難です。だから技能実習生は不当な労働環境から逃げ出すことができないのです。

⑶訴訟提起の困難性

じゃあ訴訟を提起して労働環境の改善・損害賠償金の確保を図るのはのはどうなのか?こちらも厳しいです。

外国の送り出し機関と日本の企業は技能実習生に秘密で不当な労働契約を結んでいることが多いです。

だから技能実習生は雇用契約の何が不当なのかが明確にはわかりません。訴訟で提起するにも訴える内容がわからないのです。また、企業側が技能実習生に内緒で雇用契約書などを持っていたりするため証拠もそろわないことが多いです。

加えて、技能実習生は日本語が不自由なことが多いので、明確な訴訟というものを提起しづらいです。

さらに、訴訟がうまくいって勝訴判決を勝ち取れても技能実習生を受け入れる企業は零細が多いので損害賠償金を支払う資力もない場合も多いです。そのため、訴訟で勝ったとしても技能実習生が損害賠償金を確保できるとは限らないのです。

4.技能実習生問題が抱えるさらなる問題

では、技能実習生問題が表出することによって何が問題になるのでしょうか。

まず、技能実習生に対する上記のような扱いは人権侵害にあたります。人間として当然乃権利が保障されないのは重大な問題といえるでしょう。

さらにこの人権侵害を放置しておくと国際的非難の対象になります。現に日本は2012年に国連から技能実習生の待遇に対して苦言を呈されています。国際的非難の対象となった日本の国際社会での発言力にも影響が出るでしょう。

そして何より重大なのが日本の労働力不足です。

そもそも、技能実習制度は(日本の技術を外国人に教えることで日本の技術を外国にも普及させ国際貢献を図るという当初定められた外形上の理念があるものの)現在では労働力不足を補うために利用されているのが現状です。外国人技能実習生は少子化が進む現代日本では貴重な労働力なのです。だから技能実習制度の廃止も困難です。

ところが、日本の労働環境が悪いとの認識が外国人技能実習生の間で広まるとどうなるでしょうか。当然、日本に働きに来たいと思う外国人は減りますよね。

つまり、外国人技能実習生に対する現在の劣悪な労働環境を放置しておくと

将来的に外国人労働力が日本に来なくなるかもしれないのです。

そうなると日本の生産力が減り日本の存続自体が危うくなります。

また、少子高齢化が進む日本において労働人口が確保できないと単純に高齢者を支える労働力が担保できなくなります。

この問題はすでに表出していて、現に日本と同じように外国人労働者を受け入れている韓国や台湾に出稼ぎに行く外国人は増加しています。また、ひと昔前には日本に出稼ぎのきていた中国人労働者がより待遇のいい中国本土の沿岸部に出稼ぎに行くケースも増えています。

このことは労働環境としての日本の魅力がなくなっていることに他なりません。

4.入管法改正と技能実習生問題の関係

昨年12月の入管法改正案では「特定技能2号」という外国人在留資格が新設されました。

これは特定の産業分野の外国人労働者に、一定の条件を満たせば家族の帯同・転職(同一系統の職種間でのみ可能)を認める在留資格です。

加えて、在留資格を更新すれば永住も可能です。技能実習制度は今回の改正で在留期間が長くなったとは言え5年の在留しか認められていないので、特定技能2号は外国人労働者に永住権を与える、いわば日本が移民を受け入れるスタンスを表明したものといえます。長らく移民を受け入れてこなかった日本にとってこの改正は重大な方向転換だといえるでしょう。

また、この特定技能2号として認められるためには①特定技能評価試験に合格するか、技能実習2号(技能実習を3年修了した状態)を修了するかが要件なのですが、特定技能の45%が技能実習からの移行者なのです。

この点から、日本は技能実習生に対して永住資格を設け、将来的に労働力として担保しようとしていることがわかります。急激に既存の技能実習制度を変えることは反発が予想されるため、既存の制度にオプションを付け加える方向での改善を目指したのでしょう。

何にせよ、日本が外国人労働者に対して永住資格という利点を創設し、外国人労働者を誘致しようとしていること、そして長期的かつ安定的な労働力確保のため移民を受け入れようとしていることは明らかです。

今回の入管法改正は日本が今後の日本の在り方を決定する転換点だったといえるでしょう。

5.まとめ

以上、入管法改正および技能実習制度の抱える問題でした。

私がこの記事を作成した意図は、昨年の入管法改正の裏にはこのような重大な問題が存在していること、そして

現在日本が国として大きな分岐点に立たされている

ということを少しでも多くの人に実感してほしかったからです。

日本の行く末について、どうか他人事と思わずに考えてほしい。

そして、普段何気なく見ているニュースに、危機感を持って耳を傾けてほしい。

私からは以上です。